実施日 2023年11月12日
県連ハイキング・レスキュー講習
4 月に京都労山と合同でハイキング・レスキュー講習を行ったのですが、滋賀でも同様の講習を単独でやろうということで、4 月の内容に若干手を加えて実施することになりました。
合同講習で指揮を執られた京都労山の元救助隊長・青山氏(やましな山の会)をゲ ストに招いての開催です。
まず全体リーダーよりカラビナ・スリングの特性や簡単な扱い方、注意点を説明し、その後3 班に別れてロープワークの練習をしたのち、千石岩下部の斜面に移動してフィックスロープによる登下降・ムンターヒッチ確保・カラビナスルー・ネット搬 送の実習を行いました。
1. カラビナ・スリング・ロープについて
1) カラビナの働きは、
(ア)摩擦低減
(イ)開口部の無いリング状の対象物に掛ける
2) 変形 D 型は点対点、HMS は点対 2 点以上の幅広い荷重を想定して設計されている
3) カラビナは、ナローエンド(狭い方の端)を持って、人差指と親指をゲートに掛けて握るようにして開閉する
4) マイナーアクシス(横になったまま荷重)、オープンゲート(ゲートが開いた まま荷重)は強度が1/3 程度になってしまうので注意
5) スリングはほとんど伸びないので、自己確保の際は自分より高い位置で弛みを無くすようにしなければ、落下時の衝撃で重傷を負う可能性がある
6) ロープは伸びて衝撃を吸収するダイナミックロープとほとんど伸びない(セミ)スタティックロープがあるが、今回は姿勢安定の補助を目的として、スタティックロープの使用を想定する
7) ロープは墜落の衝撃に耐える強度は無く、あくまで自力歩行・登下降の保険と考える
2. ロープワーク
1) エイトノットは確実で必要な時にも解きやすい基本の結び。オーバーハンドノット(丸結び)を1 回ひねったもので、ダブルで輪を作る時に使うことが多い
2) クライミングでは開口部の無いタイインポイントに結べるフォロースルーができることが必須だが、この講習では直接使わないため1 班では割愛した
3) クローブヒッチは一時的な固定に使う。今回は練習も兼ねて、カラビナスルーのカラビナ固定に使用した
4) スリングによる簡易ハーネスの結束は、今回はシート・ベントで統一した
3. フィックスロープによる登下降
1) 斜面垂直方向に一定間隔でオーバーハンドノットの輪を作ったロープを垂らし、
交互にカラビナを掛けながら登下降してもらう
2) なるべくスリングを弛ませずに登下降すること、斜面に対してなるべく垂直に 体重をかけることを学んでもらう
4. ムンターヒッチによる後続確保
1) リーダーとして身につけたい技術。今回は、講師 3 人が引き上げを行った
2) 足を滑らせた時、ロープで止まることを体感してもらう
3) 確保者にある程度技術が必要であるが、スピーディに引き上げ、吊り降ろしが可能
5. カラビナスルー
1) 鎖場、短い通過注意箇所にリーダーが張るフィックスロープを想定
2) 中間支点の前後で 2 枚のカラビナを1 枚ずつ掛け替え、常に1 箇所は確保されている状態で移動する
3) 基本的には水平トラバースの滑落防止対策
4) ロープは強く張り、利用者はスリングを弛ませず自力で通過することが基本
6. ネット担架
1) 園芸用ネットを流用した簡易担架。非常に軽量
2) ネット両端に、それぞれトレッキングポール(ストック)を2 本ずつ網目を縫うように通す
3) 負傷者の腰の辺りに60cm スリングで補強を施し、別のスリングでトレッキングポールとまとめてガースヒッチで結束し、固定力強化機構と持ち手を兼ねる
4) 補強スリングは更に増やしてもよく、持ち手は長いスリングを用いて肩掛けにすることもできる
5) ハンモック同様、頭と足部分は幅を絞った方がよいが、これもスリングを巻きつけることにより調整が可能
今回は、全体に内容を絞ったつもりでしたが、全くの初めての方もあり、ロープワークでもかなり時間がかかりました。
初心者の方がどこで戸惑われるかを確認しながら、今後の進め方を改善していきたいと思います。
フィックスロープでは、合同講習に倣って6mm10m のセミスタティックロープを標準装備としたのですが、訓練としては短過ぎ、連結したので数が少なくなってし まい、結果的に待ち時間が多くなりました。
また、連結したことで、ムンターヒッチ確保の際、結び目通過の技術が必要になりました。
カラビナの掛け替えでは、交互に掛け替えていくとスリングがもつれていくことへの対処が課題となりました。
一段ずつ両方のカラビナを掛けながら進むのが確実ですが、時間がかかります。
立木へのロープフィックス方法は、なるだけ憶える手順を少なくするため、全てク ローブヒッチの変形として処理できるようにしましたが、ケースバイケースで使い分けられることが望ましく、今後スタッフの技術の引き出しを増やしていくことも必要ではないかと思いました。
このような技術は、パーティ全員が理解して、必要な時に即座に使うことができなければなりません。
各会でも共有していただくとともに、県連講習としても毎年続けていければと思います。
(山の会オフトレイル N)
2023 年 11 月 12 日(日)
皇子が丘公園~千石岩下部の斜面
参加者:受講者 15 名、スタッフ12 名、ゲスト1 名
6月11日にCSSとして懸垂下降からの登り返しのテストを行いましたが、部分的にしかできなかったので、9月9日に続きを個人山行として実施しました。
場所はいずれも大津京近くの皇子が丘公園東屋です。